"私はその悲しみと一緒に生きていきます"
あのとき、自分でそう言った。
そう決意した
そのはずなのに
また逃げようとしている・・
目を背けようとしている。
そんな自分が、すごく情けない
**
悲しみと喜びと
=明日へ=
**
その夜、ゆやはふと目が覚めた。
「さむっ・・」
秋とはいえ、夜はかなり冷え込む。
ゆやは、羽織を一枚着て、外へ出た。
「はぁ・・もう冬ね・・」
ゆやはふぅ、とため息をつくと、そこにしゃがみこんだ。
ザワザワ
薄が風に揺られている。それを、月の光がそっと照らしていた。
ゆやは、しばらく何も言わずにそれを見ていた。
「ゆや?」
後方から、自分を呼ぶ声が聞こえ、ゆやは後ろを振り向く。
「狂。」
そこには、ゆやの最も大切な人――・・
ゆやもまた、その男の名前を呼ぶ。
「どうした?こんな夜中に」
狂は、昔のそれとは思えないような、優しい口調で言った。
「あはは。やっぱりバレちゃった?黙って出てったの。」
「あたりめぇだ。俺にバレずになんて100年早ぇ」
「ごめんごめん」
そんな、他愛もない会話をして、ゆやはまた薄のほうへ視線を戻す。
「風邪ひくぞ」
狂がゆやの横までやってきて、声をかける。
「大丈夫よ。狂こそ大丈夫なの?何も着ないで出てきて・・」
「フン。俺が風邪なんぞひくと思うか」
「・・・バカは風邪をひかない・・」
「何だと?」
狂の顔がすこしひきつった。
「・・って言うけど?」
「・・貴様・・いい度胸だなオイ・・俺のどこがバカだって?」
「あら。そういうこと言いたかったんじゃないの?」
「違う。」
「あらそう。ごめんなさい」
「ったく・・」
狂は、ふとため息をついた。
そしてまた、優しい口調に戻って、口を開く。
「・・嫌な夢でも見たのか?」
狂のその言葉に、ゆやは図星をつかれた、とばかりにビクっとする。
「べ・・別に。なんでもないわ。ちょっと目が覚めちゃっただけ」
狂を心配させたくないのか、ゆやはとっさに誤魔化す。が、
「お前は嘘が下手だ」
狂には既にお見通しのようだ。
「あはは・・もうお見通しなのね」
ゆやは、少しうつむく。
そして、少し悲しそうな口調で、また口を開く。
「・・あの日の夢を見たの・・」
「あの日?」
狂は、よくわからない。といった表情で、ゆやを見る。
「えぇ。あの・・雪の日の・・」
「雪・・」
そこまで聞いて、狂は口をつぐむ。
そう。あの雪の日・・
狂にとってそれは・・・
――・・自分と戦った日。
「・・・・。」
そして――・・
もう一人の自分が死んだ日。
しばらく、二人とも何も言わず、沈黙が続いた。
しばらくして、ゆやが口を開いた。
「私さ。」
「ん?」
「あの日・・・狂と京四郎が戦った日・・」
ゆやは腕に顔をうずめた。
「・・すごく・・怖かった・・」
狂は、はっとしてゆやのほうを見る。
ゆやからはあまり”怖い”という言葉は聞かない。
強がっているだけなのだろうが、いつもなら簡単に”怖い”なんていわない。
そして、なおもゆやは続ける。
「でも、あのとき自分で言った。”その悲しみと一緒に生きていく”って・・」
「なんだそれは。」
狂には何を言っているのか、さっぱりわからなかった。
「・・あのとき、ミゲイラさんに言われたの。”勝ったほうを愛せるというわけではないだろう”って。
そのとき私は、”愛せる”って言った。”そこに待つのが狂であっても京四郎であっても悲しみは一緒だから、私はその悲しみと一緒に生きていく”って・・」
「・・・。」
狂は、何もいえなかった。なんて言葉をかけていいかわからなかった。
ただ、うつむく
ゆや
の話を聞いていることしかできなかった。
「けど・・」
狂は何かに気づく。
「・・私・・逃げてるんじゃないかって・・」
「ゆや・・?」
ゆやの瞳から、ポツン、と雫がおちた。
狂は驚いた。
ゆやが泣くことなんて、滅多にありえないことだ。
そう簡単に泣くような弱い娘ではない。
「・・あれ?・・私・・なんで泣いてるんだろ・・あれ?あれ・・・っ?」
狂は、いたたまれなかった。
ゆやが泣くのなんて何年ぶりだろうか。
こんな簡単に泣く娘だったろうか・・
「ゆや・・・」
やはり
ゆや
だって女の子なのだ。
強がってはいるが、ずっと心の奥底で悲しみを背負ってきたのだ。
それに今まで気づいてやれなかった・・
狂は、そんな自分をすごく恨めしく思った。
「ごめん・・ごめんね。狂。止まらないや・・」
ゆやの瞳から次から次へと流れ出る涙は、止まってはくれなかった。
狂は、耐えられなかった。
そんなゆやを見ているのが。
「・・・・」
ギュッ
「・・っ・・狂っ!?」
だから、抱きしめた。
今の狂にはこれしかできなかったからだ。
「ちょ・・っ狂!!」
「泣け。」
「え?」
「泣きたいときは思いっきり泣け。」
「・・いいの?」
「そう言ってるだろう。」
「・・・・っ・・・」
ゆやは狂の胸で、とめることのできなかった涙を全て流した。
狂は、なにも言わずに、ゆやの頭を優しく撫でていた。
**
数分後、、
「すっきりしたか?」
「ええ。」
狂は、やっと泣き止んだゆやをそっと離した。
「ゆや。」
「ん?」
「・・京四郎には明日がねぇ・・けどな。俺らには明日がある。だから・・」
「だから・・・・?」
「・・アイツの分まで、明日を生きろ。」
「・・・・うん!!」
ゆやは微笑み、そして狂も微笑む。
**
あの日背負った悲しみ・・
そして、今、大切な人がここに居る喜び・・
どこまでいけばたどり着けるだろう
何が待つのかさえわからないけど
きっと行くよ。たどり着いてみせる。
走り出した、
輝く、
明日へ・・・
**
なおも二人は見つめあい、
ゆっくりと二人の唇が重な・・・ろうとしたとき。
「あ、狂だー。お〜い狂ー」
「ほっ!ほたる!!何やってるんですか!!」
「なんだよアキラ。なんで狂を呼んじゃダメなんだよ?」
「あなたは馬鹿ですかっ!!」
「え〜・・俺バカだもん。」
「とにかく!!黙っててください!!」
「あ、狂。」
「え?」
ゴゴゴゴゴゴ・・・
「てめぇら・・・」
「きょ・・狂!!」
「わー狂久しぶり〜」
「お、落ち着いてください狂!!僕たちは即座に退散しますのでドウゾ続きを・・」
「うるせぇ・・・いいときに出てきやがって・・・」
「うわぁ〜〜っ!!この人マヂだよ!!」
「覚悟はできてんだろうな」
「え?いや・・きょ・・狂!!うわぁぁぁぁぁっ!!!」
「あーなんか今日の狂はいつも以上にキレてるや」
「ほたる!そんなこと言ってないで逃げなさい!!」
「え?」
「ぅ"わぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その後、アキラとほたるがどんな目にあったのかは言うまでもない。
〜fin〜
**あとがき**
アニメ見てない人にはちんぷんかんぷんな内容となってしまいました。
すみません。
アニメの最終回を見て、どうしてもかきたくなったもので・・
多分、最後に勝ったのは、声的に狂さんかなぁ・・?と思ったので。
しかし初のKYO作品がこれって・・・
そして、シンルナの「未来」に続いて、また合唱曲を使ってしまいました。
これは「明日へ」って曲で、中2の合唱コンクールで課題曲だったやつです。
これも、いつか使おうと思ってました。
自分的には最後のギャグのあたりが書いてて楽しかったです。
狂さんが狂さんじゃないよ・・・(汗
KYOファンの方には悪いことしたと思ってます。すみません。
ここまで読んでくれて、ありがとうございました