逃げていた、過去

前に進めなくなって、立ち止まった。
一歩踏み出すのが怖かった。
あの雨の樹海で。

未来へ進むのが、怖かった。










a step 〜一歩〜









「わーっ!!降ってきたーっ!!!」

「げっ!!走るぞ!!!」


突然降ってきた雨に、二人は走り出す。





「ふぅー…こりゃしばらく止みそうにないな」

駆け込んだ木の下で、サスケはそうぼやく。

「どしゃ振りだねー…」

雨でぬれた着物の袖を絞りながら、が言う。


「しばらくここで雨宿りだね」
「ああ。」


しばらく無言で、降り止まない雨を見つめる。






「雨、か…」



しばしの静寂の後、が口を開く。



「なつかしいね、サスケ」

「…雨が?」

「バカ。わかってるくせに」

サスケの言葉に、は頬を膨らませる。
そんなを見て、サスケは苦笑まじりに言う。

「…そうだな。あの日も…こんな雨だったっけ…」

サスケは瞳を閉じ、"あの日"を想う。






















そう。あの日も、これくらいの雨で。
木の下で。


「サスケ…」
「……」

俺はあの時、小太郎のことがあったばかりで。


「サスケ…ねぇ、サスケってば」
「……」


俺は、返事もしなかったし
の顔を見ようともしなかった。


そのときの俺には、わからなかった。
けれど、今なら、あのときのの表情が容易に想像できる。
きっと、悲しい顔をさせてしまっていたんだろうと。



「サスケ…ここを出よう。」


突然言われた言葉に、当時の俺は驚いて顔を上げた。
が、今まで見た事もないような、強い顔をしていたのを覚えている。


「ここでこうしてたって、どうにもならないよ。…ねぇ、サスケ。」


けれど、そのときの俺は、また顔を伏せた。

「…無理だよ。」
「サスケ…っ!!」

また、悲しい顔をさせてしまっていたんだろう。
が、泣きそうになっていたのが、すぐにわかった。


「……ここから出るなんて、無理だ。」


俺がそう言った瞬間、に腕を持ち上げられた。

…?」
「サスケの馬鹿!!!こんなの…こんなの小太郎は望まないよ!!!」

そう言って、は俺の腕をつかんだまま、走り出した。


「ちょ…っ!?」

「ここを出るよ!!!」


俺は、に引かれるまま、外へ出た。
樹海の、外へと。





















「ふふっ。ホント、懐かしいよね」

が笑いながら言う。

「今考えるとさ、あのときが嘘みたい。……樹海で育った私達が、外の世界で、こんなにたくさんの人たちに囲まれて暮らしてるなんてね。」
「そうだな…」

サスケはふっと笑う。


「俺も、馬鹿みたいだったよな。今思えば。」
「ホントー!!!サスケったらうじうじしてさー!!!」
「…悪かったな。」

サスケはから顔を背ける。

「ぷ…っ。サスケかわいいー」
「うるさいっ!!!」

サスケは顔を真っ赤にする。



「あ、雨…すこし弱くなったかも?」

は空を見上げる。


「ね、サス…」

がサスケのほうを振り返った瞬間、
サスケの唇が、の頬に触れた。


「え?……えええええっ!!??」

驚いたが、頬を押さえて赤くなる。

「な…何っいきなり!!!」
「いや…その…つい。……ごめん。」

サスケは下を向いて、顔を赤くする。
もまた、同じ行動をする。


また、しばしの静寂が続く。




***




…」

「な、何?」


サスケは下を向いたまま、小さい声で口を開く。



「俺は…。お前がいたから…あの時、お前が俺を連れ出してくれたから…」


サスケは迷いを振り切るように顔を上げ、空を見あげる。



「俺は、今ここにいるんだ。…一歩を、踏み出すことができたから」


は、サスケのほうを見る。
サスケは、のほうに向き直り、の耳元で小さく囁く。


それを聞いて、は微笑む。
サスケもまた、少し恥ずかしそうに、微笑む。



「あ、雨あがったよ」
「帰るか」
「うん!」



***






今、ここにいられるのは
明日へ、一歩踏み出すことができたのは
この幸せは、
―――君がいたから。

"ありがとう"

『一歩』

大切な、『一歩』を―――…。






                 〜fin〜




○あとがき○

机の奥底から出てきました。
おそらく何年か前の授業中に書いていたものだと思われます(笑
こっ恥ずかしいぞコレ…。
この頃の私は一体なんだったんだろう。
いや、今だって十分こっ恥ずかしいもの書きますけど。←
でも今はもうドリームなんて書けないので(汗
パソに打ち込んでて懐かしくなりましたー。
こんなこっ恥ずかしいもの読んでいただいてどうもありがとうございましたー。