穏やかな日々。
昔は、考えもしなかった、
愛しい気持ち。
Dear me
「なんか、すっかり春だね」
しみじみと言った時人に、柄にもなく噴き出してしまった。
「な、なんで笑うのさ!?」
「……なんですかいきなり…。そんなしみじみと…」
慌てた様が可愛くて、更に笑ってしまう。
「時人、老人みたいですよ。今の発言。」
「な…ッ!!うるさいっ!!僕のどこを見てそんなことが言えるんだよ!!」
そう言って怒る時人もまた、一段と可愛い。
「見てって言われても、見えないんですから」
「う…っそうだった…」
そう、見えていない。時人の姿を見たのは、もう何年も前の話だ。
「…随分、綺麗になっているんでしょうね。見えないのが残念ですよ。本当に。」
時人の顔に触りながらそう言うと、時人が少ししゅんとなったのがわかった。
「…時人。落ち込まないでください。別にあなたのせいじゃないでしょう」
そう言って、時人の頭を撫でた。
…背も、かなり大きくなった。
「はぁー…本当だよねー。僕こんなに綺麗なのにさっ」
少しふてくされたように言っているが、強がりだということがすぐに分かる。
「でもさ、僕あの時も本当は子供じゃなかったし。それはアキラも見たことあるでし
ょ?」
きっとそんな感じだよ、と時人が微笑む。
けれど…
「けど、私は男の子としてのあなたしか知りませんから。」
「…っ…」
そうだ。女としての、今の時人を、私は知らない。
あのときは、男だと思っていたから。
「それは…ぇと…ごめん」
「何で謝るんですか」
何気なく言ったつもりだったのに、気にしている様な時人に、私は微笑んでみせる。
「さて、そろそろ行きますか。」
「…ア、アキラ!」
立ち上がろうとした時、時人が私の名前を呼んだ。
「どうしました?」
「えっと…その…」
時人は少ししどろもどろしていたが、決意したように私の顔を見ると、少し小さな声
で言った。
「僕が…僕が、アキラの代わりに全部見るから…っ!…それじゃ、駄目?」
「時…人…」
少し驚いた。プライドの高い時人がそんな言葉を発したことに。
だが…
「…ダメな訳ないでしょう?ありがとう。時人。」
そう。駄目な訳がない。ものすごく、嬉しかったから。
私の言葉に、時人はすごく嬉しそうに微笑んだようだ。
とても、愛しいと思った。
私は時人を抱き寄せ、しっかりと抱きしめた。
***
こんなに穏やかな時間が、流れている。
昔の自分にはなかった。こんな気持ち。
ねぇ、昔の私…
諦めちゃ、いけないんです。
こんな、愛しい気持ちを、
あなたは知ることができるのだから。
***
「やっぱり、時人のおかげですかね。」
「え?」
「いえ、なんでもありません。」
「ちょっと何それ!気になるじゃん!!」
「本当に何でもないんですよ。時人…」
そう言って、時人の頭を撫でてやる。
「アキラ…」
「おい、お前ら」
いきなり背後から聞こえた声にびくっとして、ゆっくりと振り返ってみる。
「サ、サスケ君!?」
「お前ら、人ン家の前で何やってんだよ。」
「家の…前…?」
周りを見回してみると、前方に確かに真田家があった。
(そ、そんな…(汗))
「まぁ、せっかく来たんだし、泊まってけよ」
「わーい!!久しぶりのまともな寝床ー!!」
無邪気に喜ぶ時人をよそに、私は複雑だった。
「じゃあ、幸村に言ってきてやるよ」
そう言ってサスケ君が走り去った後、時人が私の耳元で、小さく言った。
「ありがとう。アキラ」
そう言うと、時人は家のあるほうへ走っていく。
「…全く…またそんなに可愛いことを言って…。どうなっても知りませんからね。」
「アキラ早く――!」
「はいはい。わかりましたよ。」
ため息をつきながらも、私は胸が温かくなるのを感じた。
***
ねぇ、昔の私。
まさかこんな日が来るなんて、想像もしませんでしたよね。
心から、微笑えるようになったんですよ。
愛しい人が、そばにいるんです。
この穏やかな時間をくれた。
この気持ちを教えてくれた。
たくさんのことを、知ることができたんです。
あなたは、不幸なんかじゃありませんよ。
こんなに、幸せなんですから。
Dear me...
*あとがき*
授業中、ふと現実逃避がしたくなって書いたもの。
ダメだ…ダメだ。酷い。
アキラ誰ですかコレ。変態オヤジですか。
前にアキ時書いたときも思ったけど、どう頑張っても変態オヤジにしかならん…。
久々の更新がこんなんでゴメンナサイー!!!