夢に見ては、
近づいて、
遠ざかっていく。
暖かい日々。
暖かい場所。
戻りたい、のかもしれない。
一緒に馬鹿やって、
一緒に喧嘩して、
一緒に笑い合った
春の太陽みたいな
あの頃の。
春日
「……っ!!」
御陵衛士の屯所、高台寺
夜も更けた頃
藤堂平助は、悪夢に目を覚ます。
「……」
(…あー…またか。)
夜中に目を覚ますのは今日だけのことではない。
最近よくある。
この夢を見ると、眠れなくなる。
(…少し、外にでも出ようかな)
そう思うと、平助は布団から起き上がり、
静かに障子を開け、縁側に出る
(うわ…寒いなぁ…)
11月の冷たい風が平助の頬をすり抜ける。
(もうすっかり冬だなぁ…)
そんなことをしみじみ考えながら平助は縁側に座り込む。
「何をしている」
しばらくボーっと外を見つめていた平助に、後ろからふと声がかかる。
「…斎藤。」
振り向くと、そこには斎藤一が柱に寄りかかりながら立っていた。
「風邪をひくぞ」
斎藤はそう言いながら平助のほうへ歩み寄る。
「大丈夫だってー。斎藤こそこんな夜中にどうしたのさ。」
平助はそう言って、隣に座った斎藤に笑いかける。
「……昨日も、こうだったな。」
「え?」
斎藤は笑いかける平助に対して真面目な顔で尋ねる。
平助はなんのことだかわからずにきょとんとした。
「昨日も、このぐらいの時間に起きてここにいただろう。」
斎藤はもう一度尋ねる。
びくっと平助の表情が一瞬強ばる。
「…あー…バレてたんだ。さすが斎藤。」
平助はわざと苦笑いしながらそう答える。
「昨日だけじゃない、最近何度もお前が夜中に起きているのを見る。」
斎藤はそこまで言うと、心配そうに平助の顔を覗き込む。
「…眠れないのか。」
平助は斎藤から視線を外し、また外の方に目をやると、
こくん、とうなづいた。
「…夢を、見てさ。」
平助がポツリとそう語り始める。
「…試衛館にいた頃の。
総司や左之さんと馬鹿やって、新さんや土方さんに怒られて、喧嘩して…
みんなで笑ってさ…」
そこまで言うと、平助は思い出したようにふっと笑う。
「……けどさ、それが突然消えるんだ。
赤く、血が飛んで、」
平助はそう言うと、下を向く。
「…それで、目が覚めちゃってさ」
「…平助」
斎藤が心配そうな声をあげると、平助は顔をあげ、また斎藤に向かって笑いかける。
「…ま、大丈夫!もう少し風にあたったら寝るよ。」
平助はそう言って大きくのびをすると、再び外に視線を移す。
「斎藤はもう寝なよ。起こしてごめんな。」
「……いや。俺も少し、風に当たっていこう。」
斎藤がそう言うと、平助は少し驚いたような顔になったが、その後くすっと笑う。
「…斎藤も物好きだよね。」
「なんとでも言え。」
「はいはい。」
そうして、二人が外に視線を移し、しばらくの沈黙が続いた。
「…なぁ、平助。」
その沈黙の後、斎藤が口を開く。
「んー?何?」
「……もし、新選組に戻れるとしたら、お前はどうする」
斎藤の思ってもみなかった質問に、平助は驚く。しかしその動揺を隠すように、
わざと可笑しそうに笑う。
「何言ってんのー。戻れる訳ないじゃん。」
離隊した際の取り決めで、新選組に戻ることは認められていない。
「だから…もしもの話だ。」
斎藤がそう念を押すと、平助は少し考える仕草をする。
「…そうだなー…
戻りたい、かな。」
「…そうか…。」
半ば予想していた答えだ。斎藤は特に驚く風もなく、そう言った。
「…でも、俺は戻らないと思う。」
しかし、そう矛盾する言葉を繋げた平助に、斎藤は驚き、思わず平助のほうを見る。
「…何故だ。」
「…俺も、理由があってこっちに来たんだ。今更その理由を捨ててまで戻れないよ。」
平助はそう言い放つ。
斎藤はしばらく平助のほうを見ていたが、得心したようにうなづき、ひとつため息をつく。
「…実に、お前らしい答えだ。」
そう言うと、斎藤は立ち上がり、どこかへ歩いていった。
しばらくして戻ってくると、手に酒を持っている。
「少し呑もう。酔えば少しは眠くなるだろう。」
「お、いいね。」
平助はにんまりと笑うと、それを受け取る。
「斎藤……ありがとな。」
酒を呑みながら、平助はふと、そう呟いた。
「……」
その意味をわかってかわからずか、斎藤はふっと微笑んだ。
***
その夜から数日後の
11月18日。
油小路の変。
「馬鹿やろう!平助!!なんでのこのこ出てきやがった!」
永倉新八がそう怒鳴る。
「新さん…」
「戻ってこい、平助!!
今ならまだ…!」
気持ちが揺らぐ。
まだ、この人達と一緒にいたい。
戻りたい。
それが、本音だ。
土方のほうを見やる。
土方は眉ひとつ動かさず、こちらを見ていた。
「新さん…俺は…」
平助がそう言いかけたとき、背後から刀が降ってきた。
刀を下ろしていた平助の背中は、深く斬りつけられる。
「平助ェェェ!!!」
崩れ落ちる平助に、永倉が絶叫する。
平助は、倒れ込みながら、ふと、穏やかに微笑った
**
なぁ、新さん。
俺は、戻りたいよ。
でも戻れない。
戻れる訳がないんだ。
"裏切り者"が俺の役目だから。
戻りたいよ。
本当はずっと、あの頃に戻りたいって。
穏やかだった、あの場所に
あんな風に、何気なく流れてく時間が、とてつもなく好きだった。
みんなで笑い合っていた、あの時間が。
すごく、好きだったから。
でも、もう戻れないんだ。
だから、先に行って待ってるよ。
また、みんなで
悪戯して、
馬鹿やって、
喧嘩して、
怒って、
悲しんで、
落ち込んで、
苦しんで、
喜んで、
信じ合って、
笑いあって、
あの場所で、先に行って待ってるから。
だからみんなも、疲れたら帰ってこいよ。
試衛館に。
春の太陽みたいな、暖かい
あの頃に。
また、みんなで。
―――慶応3年11月18日
藤堂平助 永眠
享年23歳
-fin-
*あとがき*
平助命日記念。
(1日早いですが←)
やっぱり暗くなったorz
これ本当は前半の斎藤さんとの会話の時点で終わるつもりでした。
でもやっぱり平助命日は油小路ナシでは語れない!ということで後半無理やり付け
足しました。←
しかし本当に何が言いたかったのかわからん…
自分の中ではわかってるんですが、読んでる方に伝わるかどうか…汗
1日で仕上げたやつだから即席すぎて…←
一応フリーです。まぁ、欲しい人なんて誰もいないと思うけど、永遠にフリーな
ので、煮るなり焼くなりしてください。笑
2009年11月18日
管理人 如月神無 拝