君は強い。

確かにそう思うよ。

けど、僕は知っているんだ。
ずっと一緒にいたからね





+本当の笑顔+






「千尋、いる?」

僕は千尋の部屋の戸を開ける。


「あ、那岐!」

入ってきた僕に気づくと、千尋は嬉しそうにこっちを見て笑い、手を振る

「……相変わらず、忙しそうだね」


書類の山に囲まれている千尋を見て、そうため息をつくと、千尋は苦笑いをする



「まだまだやることはいっぱいあるもの」

苦笑しながらも、千尋はそう、力強く言う。

本当にこういうとき、千尋は強いと思う。
王としての仕事に追われながらも、笑ってる。

けれど−−…


「まぁ…いいけど。適当にやんなよ」

「もうー!!那岐はまたそういうこと言ってー!!」
適当じゃダメなの!と言いながら、千尋はまた傍らにある書類の山に手を着ける


――今の千尋は、無理して笑っている。

傍目からはわからないかもしれないけれど。



「ところで那岐、私に何か用事?」

「ああ、いや。特に何もないよ。顔だしてみただけ」


本当は、千尋に仕事を持ってきたんだけど…。
今の千尋を見て気が変わった。
僕が適当に片付けておこう…。そう思う。



「なぁ千尋、今日の夜、なんか予定ある?」
「夜?…特に予定はないよ」
「じゃあ、迎えにくるからちょっと外出てみようよ」
「外?」

千尋は少し考えこむが、すぐにまた僕に笑顔を見せた。

「うん。いいよ」
「ん。じゃ、あとで迎えに来るよ」


そう言って、僕は部屋を出ようとする。


「……無理は、するなよ」

扉の前で振り返って言うと、千尋は少し驚いているようだった。




**







「那岐!」

僕が迎えに行くと、千尋は部屋の前で待っていた

「何やってんの」
「だって待ちきれなくて…外に出るの久しぶりだから」

その言葉に、チクリと胸が痛む。
確かに最近、千尋は仕事詰めで、王宮の外には出ていない。


「……行こうか」

「うん!」








橿原宮の近くの川辺で、僕たちは座っていた


「星、きれいだねー」
千尋が空を見上げて言う。

「ねぇ那岐、なんで突然外行こうとか言い出したの?」

ふと、千尋が僕のほうを見て言った。

「お前、無理してんじゃないかと思って。」

「え…?」


千尋が不思議そうに僕を見る。

が、すぐに笑顔に戻り、笑い飛ばす。

「やだなぁー那岐。私は無理なんかしてないよ」
その笑顔が、作られたものみたいで、また胸が痛んだ。
千尋はいつも、そうやって無理して笑うんだ。


ぎゅっ

「え…ちょっと、那岐!?」

たまらなくなって、僕はいつの間にか、千尋を抱きしめていた。



「バカ千尋……そんなに無理して笑うなよ」

「…っ」


小さく言ったその言葉に、千尋は少しビクッとする。

「僕にまで隠せると思ってるのか?……わからない訳ないだろう」

「那岐…」

「僕は、ずっと千尋を見てきたんだから…っ」


言葉と一緒に、頬に熱いものが伝うのがわかった。


「那岐…泣いてるの?」

千尋が、気づいてそう声を掛けてくる。



「僕は…千尋のそんな顔見るのは…辛い…」


「那岐…っごめん」


千尋が、僕の背中に手を回して、そう言う。


「確かに私…無理してた。頑張らなきゃって…それしか考えてなくて…」
「……」

「でも、やっぱり上手くいかなくて…それを誤魔化したくて…無理矢理笑ってた
。」


また、胸が痛んだ。


僕は、王になった千尋を支えるつもりだった。
王族だからとかじゃなくて、ただの那岐として。
けれど、千尋にこんな無理をさせているのだ。
自分が情けなかった

そして、千尋が自分を頼ってくれなかったことが、悔しかった


「千尋……僕を、もっと頼ってよ。」

「え…」

「僕の前では、建て前もいらないし、気を使うこともない。…無理するな。せめ
て、僕の前では」

「那岐…ありがとう」


千尋の目から、涙が落ちた。


「何千尋。泣いてんの?」
「那岐だって泣いてるじゃない」

からかうように言うと、千尋は、頬をふくらませて言い返した。
それが可笑しくて、笑ってしまった。


「ま、お互い様だな」


そう言って体を離すと、千尋の笑顔が目に入った。

その、心からの笑顔が、嬉しかった。





「やっと、笑った」






***

君は強い。

だけど僕は知ってる
強い中にも、脆さや弱さがあるってこと。

ずっと君を見てきたから。
嬉しいことも悲しいことも、一緒に過ごしてきたから。

言ったことはなかったけれど…

そんな君の、
心からの笑顔が、僕は一番好きなんだ。


だから、笑って…?




[fin]









#あとがき#

初の遙か4作品!!
激萌えcpな那岐×千尋!!(一番好きなのはおっしーだが/笑)
衝動で書いてしまいました…が…
那岐…キャラクター違っ!!
ごめんなさーいっ><