私は、ずっと

あなたと共に育ち
あなたと共に過ごしてきたのだから。









一番、そばで











「兄上。」

月夜、人気のない縁側に一人座っていた知盛に、重衡は声をかける。


「こんなところにいらっしゃったのですか。…皆、私たちのために宴を開いてくれているのですから
 少しは顔を出されてはいかがですか?」


今日は二人の誕生日祝いの宴(将臣主催)が開かれている。



「…クッ…何を言っている。あいつらは勝手に騒ぎたいだけ、だろう?」

知盛は可笑しそうにそう言う。



「まぁ…それはそうかもしれませんが…」

そう言いかけて、重衡はふと空を見上げる。



「これは…見事な月ですね…」


そこには、まだ満月ではないものの、雲間からくっきりと存在を主張するかのよ
うに浮かんでいる月があった。


「兄上、これを見ていらっしゃったのですか?」

「まぁ、な…」


「私も隣で見させていただいてよろしいでしょうか?」


「…宴は良いのか」


「気がかわったのです」


重衡はくすっと笑うと、知盛の横に腰を降ろす。




「本当…見事な月ですね…」

「ああ…お前にもこの良さがわかるか…」

「ええ。」

「クッ…なるほど、兄弟、か…」


知盛は再び可笑しそうに笑う。


「重衡…お前いくつになる?」

「私ですか?…私は明日で23になります。」


唐突に聞かれた質問に少し驚きながらも、重衡はそう答える。



「…23、か…。ではお前と俺は23年間共に過ごした、ということになるな…」


「兄上…?」


知盛の言葉の意味がよくわからず、重衡は疑問系で兄を呼ぶ。



「…思えば、本当にお前と離れたことはなかったな…」

「…ええ。まぁ、好みが似て当然かもしれませんね。」


先程の月に関する会話を思い出し、重衡は笑う。






「…離れるだなんて、考えたことも、なかったな…」




「兄…上?」


知盛の言葉に、重衡の表情が固まる。




「何を…不吉なことをおっしゃるのです…」


「いや…可能性の、話だ。」


「……っ」


ガバッ

たまらなくなり、重衡は知盛に抱きつく。



「…重…衡?」


「私は…私は嫌です。兄上…っ!!…あなたと離れるなどと…」


「重衡…」


「…ずっと、共に育ち、一緒におりました…。離れるなどと想像もできません…っ」


重衡は、知盛の着物を必死で掴む。


「どうした重衡…震えているぞ…?お前らしくもない…」


「兄上が…不吉なことをおっしゃるからです…。」



知盛は、震える重衡の頭を落ち着かせるように優しく撫でる。


「…ああ…悪かった、な…」

「兄上…っ」


知盛を見上げた重衡は少し驚く。
知盛が、悲しげな表情をしていた。
ここ数年、このような表情を見せたことはなかったのに


「俺も…」


知盛がゆっくりと口を開く。


「俺も…お前と離れたい訳はないのだ…。」


小さな声でそう言うと、知盛は"悪かった"と更に小さく囁いた


「兄…上…っ」

重衡の瞳から、一筋涙が落ちる。


「泣くな…。こんなに良い月夜に泣いているなどもったいない…。」


知盛はそう言って、重衡の涙をぬぐってやる。


「心配するな…。離れることなど、ないだろう」

「…はい。」


安心したように、重衡は必死に掴んでいた服を離す。

すると知盛は、重衡の顔を持ち上げ、
そっと唇を落とした。


「兄…上!?」


驚く重衡をよそに、知盛は囁く。


「重衡……愛して、いる…。」


顔を近づけないと聞き取れないような小さな声だったが、重衡にははっきり聞
こえた。




「…私もです。兄上。」



重衡はそう言って微笑む。

少し、知盛が笑った気がした。




二人だけの誕生日の夜が、更けていく。






**

あなたと、共に生きてきた。
あなたの一番そばで、一番あなたを見てきた。

愛してしまったのは、必然かもしれない。


だから、
お願いです。
あなたの一番、そばに置いてください――…。

それだけでいい。
別離なんて、知らない。
何年先の、誕生日も。
あなたの、一番そばにいたい。








*あとがき*
HAPPY BIRTHDAY
ちも&重衡!!

なんか誕生日にとんでもない暗い小説書いてしまった…
スミマセン…
この二人ってこんなのしかできてこないんだょね…(笑)
つか 最早誕生日関係ねぇし… 汗
すみませんでしたorz