「ねぇ、ケーキつくろう」


「……は?」




Memory or You?



今日の夕飯はどうするか、などと何気ないことを考えていた俺の耳に、弟の声が入る。

「ほたる。いきなり何だ」

「だって、今日クリスマスでしょ?」

まるで、当然だ、とでもいうように、ほたるはさらりと言ってのける。


「まぁ、別に構わんが…」
「うん。じゃあ作ろう」


半分のせられるような形ではあるが、兎にも角にも、俺達はケーキづくりに臨むことになった。


**



「辰玲」

「ん?…今度は何だ」

「切った」

「またか!!!何回目だと思っている!?」

分かってはいたつもりだったが…まさかここまでとは…。
苺を切るだけでどうしてこうも指を絆創膏だらけにできるのか…。

「だって。やったことないし」

痛がりもせず、無表情で言うほたるに、俺はため息をつく。

「わかった。もう良い。苺は俺が切る。お前はスポンジにクリームを塗っておけ」
「わかった」

俺は、ほたるの指に絆創膏を巻きながら言う。
ほたるはまた、表情さえ変えずに頷くと、スポンジのおいてあるほうへと向かう。

(まったく…。世話のかかる奴だ。)

少し苦笑をもらしながら、俺は再度ため息をつく。
こんな弟でも、可愛いと思ってしまうのだから、自分は相当重症だと思う。



「さて…と。ほたる、できたか?」

苺を切り終え、ほたるのほうを見る。

「ん?」

こっちを振り向いたほたるの顔に、俺は驚く…と同時に噴き出した。

頬やら鼻やらにクリームをつけている。しかも全く気づいていないようだ。
全く…期待を裏切らない奴である。


「なに辰玲」

「ほたる…顔が、クリームだらけだぞ…?」

笑いをこらえながら、やっとのことでそう言うと、ほたるは自分の鼻を触り、手に付いたクリームを見る。

「ほら。拭いてやるから、こちらへ来い。」

苦笑しながら言うと、ほたるは素直に俺の近くへ寄ってきた。


「そこまで笑わなくてもいいじゃん」
ほたるは少しむっとした言い方でそう言った。

「ああ。悪かった。…ほら、終わったぞ」
ほたるの顔を拭き終えると、俺はほたるの頭をポンと叩く。


「辰玲」
「ん?」


「俺、犬じゃないんだけど」

そう言われて、一度叩くだけだったはずの手が、ほたるの頭を撫でているのに気づく。

「あ、ああ。悪い」

慌てて手を離し、ふとほたるの顔を見る。


「ほたる……お前」

「何」

「もしかして…照れているのか?」

「な…っ」

普段ずっと無表情なほたる。
その表情の変化を、兄である俺が見逃すはずはない。

「そんなわけないじゃん。ほら。続き作ろう」

顔をかくすように、ぷいと後ろを向いたほたるに、俺はまた、苦笑を浮かべる。

「そうだな。クリームは塗り終えたのか?」

「うん。もうちょっと」

そんな会話をしながら、俺達はまた、ケーキづくりを再開する。


**


「どうだ?」

「甘い…」

自分で言い出しておいて、第一の感想がこれだ。
さすがはほたると言うべきかなんというか…。


「ケーキなのだから、甘いのは当然だろう。むしろ甘くないケーキなどケーキではない」

「そんな怒んなくたっていいじゃん」

「怒ってなどいない」

「怒ってるじゃん…」

そんな、いつもの会話(?)をしながら、二人でケーキを食べる。



「まぁ、なんだかんだ言って、俺はなかなか楽しかったがな」

ふと、そう漏らすと、ほたるはケーキを食べていた手をとめた。


「…?どうした?」

その変化に気づき、俺は声をかける。


「ねぇ、辰玲」

「何だ」

「来年のクリスマスも、ケーキ作れるかな」

少し寂しそうに、ほたるは言った。

驚いた。
まさかこいつがそんなことを考えていたとは…。
まさかこいつがこんな表情をするなんて…。
父や母のように、俺までもがいなくならないか不安だったのか。



「ちょ…辰玲?」

何故だか、とても愛しくなった。
俺はすっと手を伸ばすと、ほたるの頭を抱き寄せる。


「大丈夫」

そう、一言いうと、ほたるの頭を撫でる。

「来年も、一緒だ」

そう言うと、ほたるの体の力がふっと少し抜けた気がした。


「…本当?」

「ああ。当たり前だろう」

「…なら、いいや。思い出なんて」

ほたるが少し、微笑んだ気がした。
俺はもう一度、ほたるを抱きしめる。
そして、ゆっくり、唇を落とした。



***


すごく、愛おしかった。
この生活が大好きだった。

けど、この生活がいつまで続くのか、少し不安だった。


だから、思い出が欲しくて…


でも一緒にいれるなら。
ずっと一緒にいれるなら。

思い出なんかよりも…お前がほしい。





                          ~Fin~




**あとがき**
誰だょコイツラ。(汗
久々すぎて二人のキャラがわからなかった。
全くの別人じゃん、コレ。
しかもクリスマス関係ナイし。
ぃやね、一回使ってみたかったのょ「お前が欲しい」って。
なんか、クリスマスには似つかわない作品ですが…
フリーですので、欲しい人はよかったもってってくださぃませ。
永遠にフリーなんで。(笑