「てめぇら…いい加減にしろ…」
何度目かわからない言葉と溜め息。
そんな日常の光景。
日常
土方歳三は、自室の障子を開け、半ば予想していた光景に溜め息をついた
「あ、土方さん」
「お帰りなさーい」
「……てめぇら…人の部屋で何してやがる…」
自室に入った土方が見た光景は、さも当然のように土方の部屋で寝っ転がって団子を食べる沖田総司と藤堂平助。
「何って…お団子食べてるんですよー」
沖田はそう言って手に持っている団子の串を左右に振る。
「あ、土方さんも食べるー?」
沖田に続けて藤堂がそう言葉を発し、団子を一本土方のほうに向ける。
「…そんなことは見りゃわかんだよ。」
そこで土方はまたひとつ溜め息をつく。
「問題は……なんで人の部屋で団子を食べてやがるのかってことだ。」
土方が語尾を強くしながらそう尋ねると、二人はあっけらかんとして答える。
「えー別にいいじゃないですかー」
「そうそう!なんか問題ある訳ー?」
その答えに土方はついに声を荒げる。
「大アリだ馬鹿野郎!!!
お前らどうせ人の部屋色々いじくってやがんだろうが!」
そう、それはいつものことである。
いちいち数えていられないくらいの頻度でこの二人は土方の部屋を物色していく。
「やだなぁー土方さん
今日は単純に団子食べてただけだってー」
「何もしてませんよー」
「信用できねぇんだよ!…何してた…今なら怒んねぇからちゃんと言え」
土方がそう言うと、二人は不服そうな顔で土方を見る
「だからーお団子食べてただけだって言ってるじゃないですかー」
「土方さん俺らのこと信用しなさすぎー!」
二人はそう言って"ぶー"、と唇を尖らせる。
「…本当に団子だけだな?」
念を押すように土方が言う。
「「うん!」」
二人が笑顔で頷くと、土方はまたひとつ溜め息をつく。
「…わかった。信用してやる。…だが俺はこれからここで仕事があるんだが…」
「あ、俺らのことは気にせずに!」
「お仕事頑張ってくださーい」
「…出てけって言ってんだよ。わかんねぇか」
何もわかってないのか、わかっていて言っているのか…(おそらく後者)
二人の発言に、土方はぴきぴきと顔をひきつらせながらそう言う。
「えーいいじゃないですかぁ」
「別に俺ら邪魔しないしー!」
尚も口を尖らせて文句を言う二人に、
土方は声を荒げる。
「うるせぇ!
お前らがいると集中できねぇんだよ!
さっさと出てけ!!」
「土方さんのケチー」
「鬼ー!!」
「…なんとでも言え。とにかく出て行け」
土方はそう言うと、二人の首根っこを掴み、縁側へ引きずり出す。
そしてスパンと勢いよく障子を閉める。
「ちぇっ、追い出されちゃった」
「全く横暴な鬼副長だよなー」
自分たちのことは棚にあげて、二人はそう文句を言うと、ちょうど空いていた、土方の隣の部屋へと入る。
「あーあ、おもしろくないや!」
藤堂が寝転がってそう溜め息をつく。
「…そうでもないよ、平助」
溜め息をついた藤堂に対し、沖田はそう言って"にやり"と笑い、懐からある物を取り出した。
「…!!こ、これは…!!」
「さっき土方さんの部屋で見つけたんだー」
沖田が取り出したその本は、丁寧に編まれた緑の表紙に、"豊玉発句集"と書かれていた
「やりぃ!総司!よくやった!」
「えへへー」
沖田がそう笑いながら、その本を開く。
「わー!!見て見て平助ー!!これ面白いよー!」
「えー?どれどれー?」
本を開くと、二人はすぅっと息を吸い、突然大きな声でそう言う。
「これだよこれー」
「何々ー?…知れば迷い知らなければ迷わぬこ…」
スパァン!!!!
「テメェらァ!!!やっぱりか!!!」
物凄い速さで襖を開ける音と共に、物凄い怒鳴り声をあげる土方が部屋に入ってきた。
「「あ、来た」」
二人は予想通りという顔をして、土方を見る。
「返しやがれェ!!」
土方はそう怒鳴り、一歩踏み出す
……が、土方はその足に違和感を感じた。
ふと視線を落とすと、先程まで二人が食べていた団子が無惨な姿で土方の足に踏みつぶされていた。
「な…」
「今のうち!」
「逃げろー!」
二人はそう言うと、物凄い速さで土方の脇をすり抜け、外へと躍り出る。
「待ちやがれェ!!!…ク…ッ…餡が…!」
土方もすぐに追いかけようとするが、足袋についた団子の餡がネトネトと畳に張り付く。
「クソ…!」
土方はヤケになり足袋を脱ぐと、その場に投げ捨て、
一拍遅れて二人を追いかける。
「じゃあ平助ー行くよー」
「よしきた!」
土方から逃げながら、沖田は発句集を開く。
「うぐいすやーはたきの音もーつい止めるー…ハイ、次平助!」
沖田は、走りながらその中の句を音読すると、隣を走る藤堂に手渡す。
「さしむかうー心は清きー水鏡ー!」
「テメェらぁぁぁ!!!音読してんじゃねぇー!!!」
背後から、顔を真っ赤にした、まさに鬼さながらの土方が迫ってくる
「うわ、土方さん速っ!追いつかれる!!」
そんな二人の視線の先に、ちょうど外出から帰ってきた所らしい近藤勇の姿がうつった。
そしてその傍らには、今乗って帰ってきたであろう馬が一頭。
「おぉ、総司、平助。どうしたんだそんなに慌てて…」
二人の姿を確認した近藤が、片手をあげて微笑む。
「近藤さん!いい所に!」
「その馬借ります!!」
「は…」
何か言いかけた近藤を遮り、二人は馬に飛び乗ると、一目散に駆けはじめた。
「おーい…総司…平助?」
「あ!この野郎!卑怯だぞ!!まちやがれェ!!!」
もちろん、その後を土方が追う。
「トシ……またか。」
そう溜め息をつく近藤には見向きもせず、土方は猛スピードで近藤の横を駆け抜ける。
「ふぅ…流石の土方さんでも馬には追いつけないでしょ」
「じゃ、総司、続き行くか!」
馬を走らせながら、二人は再び発句集を開く。
「着た人にーもらいあくびや春の月ー」
「春の草ー五色までは覚えけりー」
「やめんかぁぁぁぁああ!!!」
再び句を音読し始めた二人に、再び土方の怒声が飛ぶ。
「やだなー土方さん!こんなに素晴らしい句なんですから皆さんにも知ってもらいましょうよー」
「心こめて作ったんだろー?別に恥ずかしがることないじゃん」
そう言いながらも、二人は笑いをこらえきれないようだ。
「うるっせぇ!!どうせ下手なのはわかってんだよ!!笑いたきゃ笑えー!!」
「梅の花一輪さいてもー」
「うめはうめー」
「だまれっつってんだろ!!!」
その後、3人は壮絶な戦いを繰り広げ、
(ついでに屯所のいたるところをブチ壊し…)
…後一刻。
結局捕まえられた二人は、広間にて土方の説教を受けていた。
「全く…どこに隠しても見つけてきやがる…」
「そういうなら土方さんももうちょっと隠し場所考えたらどうですかー?」
「黙れ!」
「しっかし土方さんも乙女チックだよなー!そんなに顔真っ赤にして恥ずかしがることないのに」
「黙れってんだ!!」
相変わらず二人は反省する気がないらしい。
「とにかく!!今後俺の部屋に入るのは禁止だ!!
わかったな!」
「「えー…」」
「文句を垂れるな!」
「「はーい」」
二人はしぶしぶ頷くと、各々の部屋へと帰っていった。
…しかしわずか一週間後
土方の留守中に土方の部屋を物色する二人の姿があった。
そんな、日常の1コマ。
-fin-
*あとがき*
お友達の恋ちんのサイト「supply」との相互記念で書かせていただきました!
ギャグです!ギャグですよ!!ずっと書きたかったギャグです!!←
土方さんの句集ネタは一度は書いてみたいネタですよね!そう思いませんか!?←
好き勝手に書かせていただきました。本当に。恋ちんありがとう!
ちなみに、わかりにくいかもしれませんが、敬語話してるのが総司、タメ語が平助です。
わかりにくくてすみません。
とにかく楽しんで書かせていただきました!(出来は兎も角として)
ありがとうございました!