渡すべきだろうか。

今まで誰にも渡さなかったもの。

それを、今更?

***

〜sincerely〜

***

「カガリ様、今年は渡されるのですか?

「何をだ?」
「バレンタインチョコですよ」

「アレックスさんに、渡されないのですか?」


バレンタイン。
その日があるのは知っていた。

「いや、何も・・」
「まぁ!本当に?」

だが、今まで生きてきたなかで、誰かに渡したことはない。

ただ一度、お父様にだけ・・


「カガリ様、お気をつけくださいね。」
「・・?何をだ?」
「アレックス様狙いの方はたくさんおいでですので。」

「そう、なのか・・?」
「ええ。かくいう私もファンなのです」

「バレンタインチョコ、か」

作ってみようか。アスランに。
喜んでほしいし、何よりも――・・
今までの感謝をこめて。

 

***

「ラミアス艦長!」

「カガリさん?どうしたの?」

決まれば行動は早かった。
仕事を済ませ(押し付け)オーブの離れに在る、
マリュー・ラミアスの自宅まで、
足を進めていた。


「台所を拝借させていただきたい」


そう言っただけで、
マリューは理解した。

「ええ。ドウゾ。」

 

 

 

不器用であることは重々承知だ。
自分が料理に不向きであるということも、
大いに解っているつもりだ。

しかし、だ。

ここまで悪いとくれば
重大問題とまでいかないか?


一応出来上がったソレは、
多少(いや、かなり)歪な形状をしているが、
それなりにそれらしい形といえばそうだ。


「ラミアス艦長・・」

「・・はい?」

「修理費は・・気にしないでくれ。」

「・・ええ。」

半壊状態(いや、全壊に近いか?)にまでもちこんだラミアス家を後にし、
自宅まで向かう。

「・・申し訳なかったな・・」

車内で一人ごちる。

アスランにしたって、
他の誰かからもらうかもしれない。

自分からもらったとしても、
迷惑かもしれない。

 

 

「遅いっ!」

「・・すまん。」

・・帰って第一声がこれだ。

「・・アスラン。」
「なんだ?」
「今日はバレンタインだよな。」
「そうだが・・それがどうかしたか?」

「やるよ・・」

「!?・・カガリが作ったのか!?」

アスランは本当に驚いていた。

「いらないなら返せ。」

こんなときでも、憎まれ口しか叩けない
自分が嫌いになりそうだ。


「・・そんなことはない。――・・ただ、びっくりしただけだ」


笑ったその笑顔が
見れて良かった。

心から、そう思った。