私はあなたのことを何も知らない。
知らないから、あなたの居場所になることはできないかもしれない。
けれど私は――…
whereabouts
「どこまでついてくるつもりですか?」
ふと振り返って、後ろをついてくる時人に言う。
壬生での戦いが終わり、私はまた旅に出た。
しかし、時人はその私の後ろをひょこひょことついてくるのだ。
「う、うるさいな!!別にいいじゃないか!」
負けじと、時人もそう言い返す。
私はひとつため息をついて言う。
「理由がわかりません。何故あなたが私について来る必要があるんですか?」
「理由…は…」
時人は口ごもる。
本当は、ついて来られるのが嫌な訳ではない。
けれど、時人にとって、私についてくることが幸せとは思えないのだ。
時人には、壬生に帰れる家がある。
新しくできた家族が。暖かい家庭がある。
そこにいたほうが、時人は幸せになれるはずだ。
だから返さなくてはいけない。
「理由がないならついて来る必要はないでしょう」
「ちょ…っ待ってよ!!」
先に進む私を時人は小走りで追いかけてくる。
「理由が…ないわけじゃ…」
時人はまた私の少し後ろまでくると、そうぼやく。
「僕は…僕は…っ」
何か言おうと、時人はそう繰り返す。
そして、決意したように顔をあげる
「僕は…っお前と一緒にいきたいんだよ!!」
思わず、歩をとめてしまった。
冷たくあしらって返すつもりだったのに
「…アキラ…?」
時人は歩をとめた私を不思議そうに見つめている
「…あなたは…それでいいんですか?」
「え…?」
「帰る家があるでしょう。…そこで暮らしたほうが幸せだとか、考えないんです
か?」
言うつもりのなかった言葉が、次々出てくる。
それほど、時人の言葉は衝撃的だった。
否、うれしかったのだ。
「私についてきた所で、あなたは幸せには…」
「…何言ってんの。僕の幸せなんて僕が決めることだし。」
私の言葉を遮るようにして、時人はそう言う。
「僕は、アキラと行きたい。」
今度は、きっぱりとそう言ってくる。
その言葉に、私の決意は揺らいだ。
返すつもりだったのに
時人を自分の側に留めておきたいというもうひとつの感情が大きくなる。
「…私はあなたのことを何も知りません。だから…あなたの居場所にはなれない
かも、しれませんよ」
少し自嘲気味にそう言う。
「…僕の居場所も、僕が決めるもん。……僕は…ここにいたい。」
嬉しかった。
自分といると時人が傷つくかもしれない、そう思っていた感情を、どうでもいい
と思えるくらいに。
「それに…僕のこと知らないって言うけど、はっきり言って僕だってアキラのこ
と全然知らない。……これから知っていきたい。それじゃ、駄目なの…?」
そう言われて、時人を返さなくてはならないと思っていた感情が一気に崩れ落ち
た。
私は、衝動的に、時人を抱きしめる。
「ちょ…っ何だよ!!」
「…わかりました。…一緒に、行きましょう」
それを言って、私はふっと笑う。
「いえ…こんな言い方はずるいですね。……一緒に、来てください。時人」
それを聞いて、見えないが、時人が笑った気がした。
「…地の果てまでだって、ついてってやるんだから」
そう、時人がいじわるっぽく言った。
あなたの、居場所にはなれないかもしれない。
傷つけてしまうかもしれない。
不幸にしてしまうかもしれない。
けれど私は…
あなたの居場所になれたらいいと思う。
あなたが自分で決めると言った、
…あなたの居場所になりたい。
**fin**
*あとがき*
突発的に20分ほどで作ったアキ時。
さすが突発的というか…酷いです。自分でも何がしたかったのやら。
旅に出る前に、こういうのがあったらいいなぁとか思ったんです。